続・おねがい J Storm

伊野尾慧くんのファンです。

「カラフト伯父さん」(5/3 18:00)

ネタばれしてます。



カラフト伯父さんは徹くんにとってどんな存在だったか。悟郎に対する徹くんの愛憎はもとより、独白によって明かされるそのこと自体は、いわゆるどんでん返し的な観客を仰天させる類の真実、では決してなかったと思います。
それより、と言うのも変なのですが、徹くんから吐き出されるあの日の出来事のひとつひとつが光景として浮かび上がってきて、文脈的に徹くん本人が体験したエピソードであるのに、もっと広範囲の悲しみと言うか、最終的に再び徹くん中心の物語にぐいっと引き戻されるのだけど、確かにこれは徹くんという一人のキャラクターを通した震災の生々しい『記録』*1なんだなぁと感じる部分が少なからずあって。

「カラフト伯父さん」は父と子の愛憎劇というていを取りながら、阪神・淡路大震災『記録』する、ドキュメンタリー的な側面もある内容で、その相反する二つの要素は演劇作品としての「カラフト伯父さん」に歪さを生じてしまっているのではないだろうか、という思いに至ったわけです。焦点の置き所というか。なんだか漠然とした言い方しか出来ないけれど。


3度目の鑑賞であるにも関わらず、「カラフト伯父さーーーん」と叫ぶ徹くんの姿に涙がこぼれてしまうのは、失ってばかりの孤独な青年への感情移入からなのか、汗と涙でぐちょぐちょになりながら表情を歪ませる、今まで見たことのない伊野尾くんに対する衝撃からなのか、背景にある実際に被災した方々への同情なのか、その全部なのか。


父と子の愛憎劇、ホームドラマとして見ると、「カラフト伯父さん」のエンディングは少々歪つです。
けれど、わたしは「ほな、行こか〜〜〜!」と出発する徹くんの笑顔で終わるこのお芝居がどんどん好きになっていってます。

伊野尾くんは稽古前のインタビューで「逃げ場がない」と言ってましたが、伊野尾くんの初主演舞台が3人芝居でよかったなあと本当にしみじみそう思う。ピアノにおけるバイエルではないけど、伊野尾くんにとってステップアップする為の教本として最適な作品だったんじゃないかな。イチから丁寧に積み重ねてゆけるお芝居でよかった。



5/3 18:00公演メモ。

・4/28ぶりの鑑賞だったけれど、やはり連日の喉の酷使からか声がつぶれてる気がした。
・セリフ回しがさらにリズミカルになってるように感じた(特に前半)。関東人にはないリズム。
・イケズなストーブのなだめ方、なんでそんななまめかしいの笑。抱きしめてからの蹴り。ただのDV。
・序盤の追いかけっこシーンのお3方の息の合いっぷり。よりドライブ感が増してた。軽トラにつかまってぴょんぴょんする徹くん。
・仁美「驚いた〜〜?」 徹「驚いたぁ〜(棒)」 (棒)な相の手に爆笑。うまい。
・お洗濯もののきちっと端っこを合わす徹くん。几帳面が隠せてない。
・悟郎の老眼からのフラッシュダンスが面白すぎるんだけど(踊りすぎたことを後悔してて噴き出した)、よくよく見たら転職雑誌を読んでるのね、ここ。
・エプロンのうしろのひもが何度かほどけ、お芝居しながら自然にしめ直していて最終的に縦結び。
・再びやってくる孤独をかき消すように、ラジオのボリュームをぐいぐいあげるシーンに毎度ギュンとなってしまう。
・独白シーン。徹くんの額からどんどん汗が噴き出てくライブ感がやっぱり凄まじい。
・『実際に時間経過がない中で、気持ちを落ち着かせながら演じるのもハードルが高くて』と伊野尾くんもパンフレットで仰ってるけれど、あそこまで出し切った後に一転してカラっとした表情に戻すの、毎回大変な作業だろうなあ…。
・仁美チェアにどうどうどう、座ろ♡シーン。仁美さんに雑と言われる徹くん。
・シゲアキ先生、濱田マリさんも観劇されてたご様子。先生、本当に来てくれるだなんて!ありがとうございます…!

*1:パンフレットより